南海日日新聞社 2008-10-11
ル・クレジオさん二〇〇八年のノーベル文学賞に決まったフランスの作家ジャン・マリ・ギュスターブ・ル・クレジオさん(68)は〇六年一月、奄美自由大学を主宰する文化人類学者の今福龍太東京外国語大学大学院教授とともに奄美大島や加計呂麻島などを訪ね、島々の自然や潜みの音や文化などに関心を寄せ、「もう一度来てみたい」など語っていた。
ル・クレジオさんは同年一月三十一日から三泊四日の日程で来島。初日は奄美市笠利町節田の唄者や立神を訪ねた後、ばしゃ山村で旧正月料理を味わった。さらに同町喜瀬の聖地に、しばし身を置き、佐仁集落八月踊り保存会の前田和郎会長宅で大島紬の締機や織りを見学。伝統の八月踊りに触れ、六調の輪にも参加した。
翌日からは加計呂麻島、請島の集落をめぐり、同年二月三日、帰路に就いた。ル・クレジオさんは終始島バナナを携えて、行く先々で静ひつに、ゆるりと身体を添わせ、自然の響きや奏でるような土地の言葉に耳をすましていた。請島の質素な民宿を訪ねた時は「いつか、ここに滞在したい」とすっかりお気に入りだった。
ル・クレジオさんを案内した今福教授は「奄美で自然の石や木はどういう音を立て、島の人はそれを何と言うかなどとしきりに聞いた。島の人が使う言葉や自然の音に彼ほど繊細な感性を持って入った人はいない。意味を形成する以前の音に敏感に反応する=耳の人=だった」と話した。
また、終日同行した奄美市名瀬の写真家で奄美自由大学の濱田康作事務局長は「加計呂麻島の実久集落では浜を一人でゆっくり端から端まで歩き、それから静かに集落の中に入り、歩き回ることなく全身でじっと観察されていた姿が印象的だった」と当時を振り返り、「いずれ、また島の響きに会いに来る人ではないかという気がする」と話している。
コメントしてください。ログイン(
)