クエの種苗安定生産へ

紀伊民報社 経済 2008-09-30

水流と餌工夫で全国平均の4倍

 鍋の高級食材として知られるクエの生産技術開発に取り組んでいる県水産試験場(串本町)は、稚魚水槽の水流と餌を工夫することで、全国平均の4倍に当たる水槽1トン当たり1900匹の種苗生産に成功した。近く、県内沿岸に1万1000匹の稚魚を放流する。担当者は「今はまだ生産が不安定だが、技術確立に一歩前進した。今後、10トン水槽で1万匹が安定生産できるように研究を進めたい」と話している。
 試験場では今年6月から、方形の9トン水槽3基と円筒形の13トン水槽2基の計5基で飼育実験をした。受精卵は、串本町の近畿大学水産研究所大島実験場と長崎県の水産総合研究センター養殖研究所五島栽培漁業センターから譲り受けた。
 クエはふ化後10日間は水槽の底に沈みやすく、これが初期死亡の大きな要因とされている。このため、水平方向へ緩やかな流れをつくって稚魚が水流に乗って泳ぐことで沈みにくいようにした。この結果、最も成果の良かった円筒形水槽では、2カ月で15万匹のうち約2万5000匹が生き残り(生存率17%)、平均全長24ミリに成長した。方形水槽では約7万4000匹のうち約1万匹(平均全長26ミリ)が残った。
 今回は稚魚に与える餌も工夫しており、計4万匹の種苗を生産することができた。一方、飼育方法は違うがまったく残らなかった水槽もあった。生産されたクエの稚魚は県内の漁協に配られ、10センチほどまで中間育成した後、海に放される。
 クエの種苗生産は全国の公共機関などで行われているが、どの機関の生産も不安定で、2007年度は1トン当たり1500匹以上生産した所もあったがゼロの所も多かった。全体の平均は500匹弱で生存率は5%に満たないという。試験場の南有樹研究員は「放流魚の追跡による放流効果の検証もしていく」と話している。

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