亡き同級生の母に贈る 南大東島産パパイヤの「幸せケーキ」

長野日報社 未分類 2008年5月14日

 「亡くなった同級生のお母さんを喜ばせたかった。使ったことがない食材でのケーキ作りは悪戦苦闘の連続だったが、目に見えない何かに導かれたように完成した」―。伊那市清水町のケーキ店「菓匠Shimizu」のシェフパティシエ清水慎一さん(33)は、青パパイアを使ったケーキを考案し、発売を始めた。9年前に交通事故で亡くなった友人の井地倫太郎さん=当時(24)=の母、千代子さん(55)=同市小沢=が元気の源にしている南大東島産の青パパイアを食材にした商品化の第1号。「幸せのパパイア」と名付け、新たな名物として売り出していく。
 倫太郎さんは看護師をしていた1999年5月、病院からの呼び出しを受け、急いで向かっていた途中で交通事故に遭い、亡くなった。清水さんとは中学校時代の同級生で、英語が得意だった2人は常にクラスで1、2番を競い合っていたという。
 長男の急死に「これからどうやって生きていっていいか分からなかった」という千代子さんを励ましたのが、勤めていた会社の上司。出身地の南大東島の青パパイアを贈ったのがきっかけで交流の和が広がり、2004年には「青パパイアの会」(小林史麿会長)が立ち上がり、市民と島民が互いに行き来するようになった。
 青パパイアは脂肪と糖分を分解させる成分を持っているためダイエットに効果があり、ビタミンCや食物繊維を豊富に含み、どんな料理にも使えるのが特徴。半面、ケーキに欠かせない生クリームやバターに含まれる乳脂肪や砂糖を分解してしまうため、ケーキの食材に使うのは難しいとされてきた。
 清水さんは昨年12月、千代子さんからの依頼を受け、青パパイアを使ったケーキ作りに挑戦。ところが何度練りこんでも材料の生クリームや牛乳の成分が分離してしまい、独自のにおいがするため、一度はケーキにするのを断念しかけた。
 新年度を迎えた今年4月、「お菓子屋は人と喜びを共有するのが仕事」と一念発起して再挑戦することに。硬い身を削ってはちみつでじっくりと煮込むと成分が分離しないことを発見。さらにシャキシャキとした食感に合うヨーグルトをベースにするアイデアを思いついた。
 完成した「幸せのパパイア」は、青パパイアならではの食感を残しながらヨーグルトの酸味を生かし、甘さを抑えたさっぱりした味に仕上げた。パパイアは四季を問わずに入荷できることから店の定番メニューに加え、今後も研究を重ねる。
 清水さんは完成した翌朝、早速電話で千代子さんに報告。千代子さんは出来立てのケーキを大切に腕に抱えて持ち帰り、倫太郎さんの写真が飾られた仏前に上げた。食べてみるとその完成度の高さに驚き、感激したという。この日は5月5日、くしくも倫太郎さんの命日だった。
 千代子さんは「待ちに待った青パパイアの商品化だったので『舞い上がっているかも』と思い、ほかの会員に食べてもらったら全員からすぐに『おいしい』『いつから売るの』『値段はいくら』と反応があった。青パパイアとめぐり合ってから多くの人にパワーを頂いている」と振り返る。
 清水さんは「電話した日が命日だったとは知らなかったので、何か運命的なものを感じる」と感想。小林会長は「青パパイアの商品化は何度か挑戦したが難しかった。健康にいい青パパイアを使った生菓子は全国初。伊那の新名物になる」と期待している。
 「幸せのパパイア」はガラスケース入りで350円。

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