迷いクジラ自力で外洋へ

紀伊民報社 地域 2009年6月3日

 田辺市新庄町、内の浦湾に迷い込んでいたマッコウクジラが2日午後、自力で田辺湾から外洋に出た。県の監視船が、白浜町の番所鼻から西に約4キロ沖で、クジラが海に潜ったのを確認した。見守りを続けていた関係者は「奇跡だ」と喜んだ。専門家は「これだけ大きいクジラが、迷い込んでから20日もたって外洋へ出ることは全国初ではないか」と話している。
 市の対策本部によると、海に潜ったクジラを監視船が見たのは2日午後2時25分ごろ。連絡を受けた対策本部長の福井量規産業部長らが渡船で現場へ向かい、30分ほど探したが見つからなかった。
 クジラは2日午後1時ごろ、田辺湾の神島付近から外洋に向けて泳ぎ始めた。これまでのように頭の方向を変えることはほとんどなく、速度も時速10~15キロと「相当な速さ」(担当者)だったという。
 支援アドバイザーを務めていた日本鯨類研究所(東京都中央区)の石川創次長(49)は「偶然、外洋へ出たという見方も捨てきれないが、(異常がある可能性を指摘していた)耳が治った可能性の方が高くなった。人とクジラにとって、最高の形で終えることができた」と話した。
 同じく支援アドバイザーだった三重大学大学院(津市)の吉岡基教授(50)も「偶然か聴力の回復」という石川次長と同じ見解を示した上で「これまでは数日で出て行くか死んでしまうか、人が出すかだった。今回は極めてまれなケース」と述べた。
 マッコウクジラは5月14日朝、内の浦湾に迷い込んだ。雄で体長約15メートル、体重は推定50トン。浅瀬で動くことが少なくなり、餌もとれずにやせてくるなど衰えが目立っていた。そのため、対策本部では死んだ場合の措置も検討し始めていた。
 クジラが無事に外洋へ出たことを受け、福井本部長は「多くの皆さまが望んだ結果となり、大変うれしく思っている」とのコメントを出した。まだクジラが戻ってくる可能性もあるため、対策本部の解散は「急がない」と話している。

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