伊那市長谷の市無形民俗文化財「中尾歌舞伎」を伝承する中尾歌舞伎保存会の秋季公演が2日、伊那市長谷中尾の中尾座で開かれた。命懸けで恋路を貫いた娘の悲話を描いた人情劇「神霊矢口渡 頓兵衛住家の段」を上演。メンバーの熱のこもった演技に、満席となった会場から拍手喝采やおひねりが盛んに飛び交った。
演目は鎌倉幕府滅亡後の新田家と足利家との覇権争いを基にしたストーリー。追っ手から逃れる武将新田義峰に恋した娘・お舟が、義峰を殺害しようともくろむ父・頓兵衛や下男から助けようと奮闘し、ついには父の刃に倒れてしまうという物語。前半のユーモラスな場面から一転、後半は悲哀漂う雰囲気となり、観客を物語の世界に引き込んだ。
華やかな衣装をまとった役者たちは、見得をするなど、味のある演技を披露。三味線の音色に合わせ、情感のこもった節回しや動作で、娘の恋慕や、人間の強欲などを切々と表現。クライマックスで、お舟が義峰の包囲網を解くための合図の太鼓を打ち、息絶えると、会場から「日本一」との掛け声や拍手が鳴り響いた。